幌延深地層研究センターに行ってきた。
こんにちは。今回は幌延深地層研究センターの見学に行ってきましたので紹介したいと思います。
そもそもなぜ見学に来たのかというと元々興味があったのもありますが、調査坑道に至るまでの立坑が現役で稼働しているためです。
稼働している立坑はまだいくつもあるとは思いますがその見学をできることは中々ないのではないでしょうか。
車を走らせ幌延深地層研究センターに着くと、まずゆめ地創館という建物に入ります。
中に入り階段を登ると受付?の女性が立っており見学の予約をしていることを伝えると見学ツアーの説明をするために地上1階の映像室(ジオシアター)に案内されました。
机には資料やアンケートなどの紙が
この部屋で幌延深地層研究センターの概要や坑道見学での注意点などを聞きました。
その後は館内を説明付きで案内されました。その内容については是非見学をして聞いてください。館内の見学は予約不要で無料です。(坑道見学の場合は2週間前までの予約が必要)
館内の様子を大まかに紹介します。
再びエレベーターで地上2階に。
今回の見学中、何度も当センターには廃棄場にしないこと、放射性物質の持ち込みは一切していないことを説明されました。
コアサンプルはコロナ前なら触れたそうですが全ての展示品が触れなくなった影響でこちらも見るだけ。案内の方がペンで叩くと音が違い、岩質の違いを感じました。
幌延と瑞浪、2つの研究所がある理由はこの岩質の違いにあります。瑞浪は結晶質岩である花崗岩で淡水系、硬岩であるのに対し、幌延は堆積岩である泥岩で塩水系、軟岩であります。
どこに最終処分場ができるかわからないため、この大きく2つに分けられた環境について調査研究しているということだと思います。
なお、瑞浪超深地層研究所は令和2年2月から埋戻しを開始してるため、幌延深地層研究センターは日本唯一の深地層研究施設と言えます。
幌延深地層研究センターは現在令和10年まで計画されており、深度500m調査坑道の掘削の方針が令和3年4月に決まりました。
2021/08/20現在の立坑掘削長は380mです。地下施設整備状況は下のリンクより
地下施設整備の状況 | 深地層研究計画の状況|国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 幌延深地層研究センター
この後はまた地上1階に降りるのですがその時に乗るのがVT-500というもの。VTはVertical Transporterの略です。
地下500mまでの降下を疑似体験できる装置で1階と2階の高低差5mを2分間かけて降下します。
つまりめっちゃ遅いエレベーターというわけです。これを言ってはオシマイだけど…
だって2.5m/m、つまり0.15km/hですよ。。。
中に乗り込んで扉を閉めると側面についた窓のような液晶画面に立坑を降下しているような映像が流れます。
降下速度と映像の速度が異なるので変な感覚になります。(停車しようとする電車の車窓から発車する電車を見ているときに近い)
乗車時間が2分もあるのでどんなところに着くんだ?地下なのかな?とワクワクしていましたが、意図的な停車衝撃を感じ外に出ると最初に説明を受けた映像室の前でした。
どこか騙された気分でした。
VT-500というスーパーノロノロエレベーター立坑降下体験装置の目の前に貫通石コーナー。
調査坑道貫通点で採取した石で深度によってその特性は異なっており見た目も少し違って見えました。
深度250mで岩質が変わるそうで250mまでは珪素質泥岩で350mからは珪質泥岩だそうです。
当然深いほうが土圧は高く密度も高いため同じ大きさでも250mよりも350mのほうが重いそうです。これも実際に持てたら良かったのですがコロナで…
同じ大きさだとより比較しやすいような気がします。
次は地層処分技術の一つであるオーバーパック、緩衝材の展示コーナーです。
まず地層処分システムの中核を成す多重バリアシステムですが、天然の岩盤と人工物を組み合わせたものになります。
人工物、つまり人工バリアはガラス固化体、オーバーパック、緩衝材の3つからなります。
「地層処分」とは何ですか?|NUMO(ニューモ)原子力発電環境整備機構より引用
ここで展示されているものはオーバーパックと緩衝材になります。
確か全体で13tだったはずです。これを見たとき想像よりデカイ…と思いました。
手前の横に倒してあるものがオーバーパックで炭素鋼でできています。厚さは19cmで1000年間地下水と触れないようにガードする役割を持っています。これだけで6t。
緩衝材は粘土(ベントナイト)と砂を混ぜたものでベントナイトの吸水性、吸着力により地下水の移動が遅くなり、放射性物質も吸着されます。
ベントナイトとは猫砂(トイレの砂)に使われているといえば分かりやすいかもしれません。吸水すると固まります。その実演の様子がコチラ。
水を吸ったベントナイトがすぐに固まる様子が見てわかると思います。
廃棄物は今紹介したように縦に埋めるものと坑道に横に置くものがあり後者は横置きPEM 方式(PreFabricated EBS Module)が検討されています。
緩衝材とオーバーパックを地上で一つのパッケージにしてから地下に搬送し定置するものらしいです。これは36tもあるそうでこれを何万本も近くに搬送するのは大変なことです。
右の緑の塊が緩衝材とオーバーパックが一体になったもの。実際に見るとかなり大きいです。
廃棄物のパッケージが乗る台座。隙間にはベントナイトが詰められる。
ゆめ地創館最後の見学場所は地上45mの展望階です。
45mにも意味があったはずですが忘れてしまいました。
展望階からはお隣のトナカイ牧場や坑道掘削で発生した土を保管しているところや施設を見ることができます。天気のいい日は利尻富士が見えるとか。
トナカイが走ってました。
掘削発生土。遮水シートなどで覆われているみたいです。埋め戻しの際にはこれが使われるのでしょう。
オレンジが西立坑、緑が東立坑、ピンクが換気立坑。
青いラインが入っている施設は排水処理施設です。
排水処理施設では坑道掘削時の排水に含まれるホウ素や窒素などを処理しています。処理水は8.4kmの排水管を通して天塩川に放流しています。
排水管敷設ルートが私の今回の走行ルートでした。
待ってました。ついに坑道の見学です。
展望階から降りると女性が立っておりコチラへどうぞと案内される。
案内通りに進むとまた女性が立っている。誘導に従い更衣室に入るとまた女性が。
入って最初にも思いましたがすごい接待だなと。確かにこの研究自体地域住民を始め、多くの方の理解を得ないといけませんから余計丁寧に対応しているのでしょう。それにしてもすごいけど。(幌延町の子が地元就職しているのかな?雇用創出的な?)
なんだかんだでつなぎに着替え、ヘルメットや安全ベスト、懐中電灯等を装備しました。
着替えたら車で移動です。
運転手さんもとても雰囲気良く声をかけてくれます。
発車すると案内の方がお見送りするために待っており頭を下げている。なんだか偉くなった気分です。
西立坑に着くとまず数メートルをエレベーターで降ります。エレベーターと言っても作業用といった感じで振動や音がします。
流石に違うことは分かっていましたが立坑を降下する人キブルのようで思って少し興奮しました。
ガチャンという音をたてて止まります。
エレベーターから降りると立坑の入り口です。
鉄板でできた足場にいくと人キブルが使用中で5分ほどお待ち下さいとのこと。
足元を見ると
足元の下が見える!!
五稜郭タワーなどにもこういった足元が透過素材のものはありますが、こっちのほうが怖いです。
耐荷重は2000kgのようです。とはいっても踏んだりはしませんよ…
直径6.5mの立坑に渡されたこの足元の下には380mもの深さの坑道が伸びておりもしものことを考えるとゾッとしますね。
待ってる間時間があったので辺りを見回す。
そうしていると人キブルが到着。
中から作業員が二人ほど降りました。
そうして中に案内されました。人キブルと足場の隙間がチラッと見えますがそんなに大きくないので大して怖くないです。
待ちに待った坑道見学。人キブル昇降の様子を撮影し、編集しましたので御覧ください。
最初はゆっくりと動き始めました。一つ前のエレベーターより振動が少ない。
ある程度経つとスピードアップします。
3分ほどで250mに到着。高所恐怖症の人はご遠慮くださいとのことですがそこまで高さを感じませんし作業用と言っても目の細かい金属で覆われており安心感もあります。(それよりも閉所恐怖症のほうがキツイかもしれない)
細かく紹介するとこれから見学されるかたの楽しみが減ってしまうのでざっくりと紹介しますが結局ほとんど紹介してしまうかも。(それでも見学はおすすめします。)ネットでの拡散もご自由にと言われていますし!
まずは地震計が設置されている場所です。説明のための地震計の近くでハンマーを叩くと横のモニター波形が表示されます。
要は地下のほうが地上に比べて地震による揺れが小さいよということです。これが地層処分である理由の一つです。
実際に起きた地震時の加速度ですが地下のほうが小さくなっています。
250mもの深さですから何かあったときの対策をしなければいけません。次に紹介されたのは避難所です。
事前の説明にもありましたが避難所には簡易トイレや食料、酸素が吸えるマスクなどの装備があります。火災の際には扉を閉めて火災から逃げることも可能で避難所には地上から新鮮な空気が送られるとのことです。
西立坑から歩いてくると右手にある。
突き当りまで進むと換気立坑と東立坑の分岐点です。
今回は東立坑ではなく換気立坑までの往復ルートなので左に進みます。
左に曲がるとすぐに幌延の窓という深度250mの地盤が露出している場所があります。
解説にはより深い地層のほうが珪素が溶けている様子が載っています
排気立坑へ進むと防音壁のようなもので仕切られているためそれを通過します。西立坑から来たときも壁にある扉からこの区画に入りました。
坑内は換気の音や機器の音でうるさく地声ではコミュニケーションをとることは難しいです。ガイドの方はマイクを使って説明されています。
ここでは地下水の測定を行っており調査している方もいました。
坑道掘削後10年以上たった今も地下水の動きに変化はなくこうした研究が地層処分の技術となっていきます。
換気立坑を通り過ぎた突き当りに着くと同様に地下水の試験を行っていた場所へ。
現在は機器が設置されているのみで試験は行われていなそうです。
クレーンレールというのでしょうか、上部の緑のレールが歪んでおり何かあったのか?と思いました。錆も多いし。
地下水の試験設備跡
振り返り排気立坑を見る。
ピンぼけ写真でごめんなさい。
排気立坑からもズリの搬出をしているようでいくつものワイヤーが見えます。排気立坑は一回り小さい直径4.5mです。
後は西立坑に行き地上に戻るのみです。
もう少しゆっくりと地下を見学したいのが本音ですが一般向けには丁度良い時間設定なのでしょう。
坑道にはいくつもの機器が取り付けられており実験施設を感じさせます。
帰りの人キブル上昇中の動画も先程紹介した動画に含まれているので気になる方は御覧ください。
地上に戻り立坑施設内の展示物を眺める。
立坑巻き上げ機の図。本物は見れませんかと聞いてみましたが難しいそうです…
化石
西立坑を出て送迎の車に乗ろうとしたところ立坑の土砂積み出し所?が見えたので少し見学。
土砂はここから流れてきてダンプなどに積み替えるそうです。
ロードヘッダーっぽい何か
車に乗りゆめ地創館に戻り、一式の装備を返却し最初に説明を受けた部屋に移動。
アンケートなどを受けた後自由質問時間があり終了となる。他の見学者は居なかったので短時間で終わりました。
以上、幌延深地層研究センターの見学でした。未来の日本に影響する重要な実験を行っている施設を見学でき勉強になりました。また、立坑をキブルで昇降するのも貴重な体験でした。
幌延町や付近の街を訪れる際には是非!
ただ、坑道見学には2週間前までの予約が必要ですので早めの連絡をおすすめします。
詳しいことは以下のHPで確認するようお願いします。
最後までお読み頂きありがとうございました。